夫婦愛を育む 16
愛とは動詞である

ナビゲーター:橘 幸世

 「夫に情が行かない、愛しているかどうかも分からない」といった嘆き(悩み)をセミナーに来られたかたから聞くのは珍しくありません。
 「愛してる」という言葉には、自然といとおしさ・慕わしさが心の内から湧いてくる、といったイメージがあるので、そんな情が自分の中になく、むしろ負の感情の方が湧いてくると、「愛せない」と葛藤するのでしょう。まして、理想家庭を築きたいと思っておられれば、そんな自分を責めることもあるかもしれません。

 かつて読んだスティーブン・R・コヴィー著『7つの習慣』の中に、とても印象的な一節がありました。

 著者の講演時に一人の男性がこう質問します。
 「妻のことをもう愛していないし、妻も同じだと思います。子供が三人いて今後が不安です。どうしたらいいかアドバイスをください」。それに対してコヴィー氏は「奥さんを愛してください」と答えます。「だから、妻をもう愛していないんですよ!」と繰り返す彼に対して、氏は同じ答えを返し、さらにこう語ります。「愛とは具体的行動なんです。愛するという気持ちは、愛するという行動から得られる果実です」。

 受け身的な人は、愛を単なる気持ちとして捉えがちで、感情や気持ちに支配されている。一方、主体的に生きる人にとって、愛(love)とは動詞なんだ、と氏は説きます。(良い家庭を築きたいといった)目的意識や価値観を柱として努力していく中で、失った愛する気持ちを取り戻すことができるのだ、と。(注解:英語のloveは動詞としても名詞としても使われる)

写真はイメージです

 エーリッヒ・フロムは、愛とは心の技術である、故に知識と努力が必要だ、と言いました。正しく理解して、練習しないといけないんですね。

 情の成長は一朝一夕にはなりません。さまざまな体験を通してなされ、一定の時間を要するものです。配偶者への情が湧かないとしても、そんな自分を責めるのはやめましょう。
 結婚は、縁といわれますね。それぞれの家系から受け継いだ愛の宿題を持ち合って、夫婦となっています。その宿題は夫婦二人が一緒にこなしていくものですが、なかなか解けない難問が出た時、妻が解答のきっかけをもたらすことがしばしばです。

 地道にコツコツ、幸福の原則の練習・実践の積み重ねをしていきましょう。日々の努力が幸せにつながります。その過程で、お子さんの問題など、他の課題もやがて良いようになるでしょう。