青少年事情と教育を考える 197
いじめ対応と「こども家庭庁」

ナビゲーター:中田 孝誠

 北海道旭川市で昨年亡くなった女子中学生がいじめを受けていたことが明らかになり、大きな問題になっています。
 女子中学生は以前からいじめを受けていたことを訴えていましたが、学校や市教育委員会はいじめと認定していませんでした。

 昨年3月に女子中学生は凍死した状態で見つかった後、市教委がいじめの重大事態と認定して第三者委員会が調査を開始。今年3月にようやくいじめと認定しました。
 今回、こうした市教委の対応の遅れが批判されているわけです。

 教育現場はさまざまな課題を抱えていますし、いじめ対応は決して容易ではありませんが、被害を受けた女子中学生と家族のことを思えば、市教委や学校の対応が批判されてもやむを得ないでしょう。

 現在、いじめ対策の基本になっているのは、2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」です。
 同法では、いじめの定義を「児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」としています。
 被害を受けている児童生徒の側に立って幅を広くして判断するということです。そして学校に対しては、いじめはどの学校でも起こり得るという前提で積極的に把握し、子供の生命や心身、財産に大きな被害が及ぶ可能性があるものを「重大事態」として対応するよう求めています。

 文部科学省の統計を見ると、2020年度の公立学校のいじめ認知件数は51万7163件でした。
 2019年度の61万2496件から約10万件減りましたが、コロナによる休校の影響などが大きいと考えられています。

 また、いじめを認知した学校は78.9%ですから、ほとんどの学校で起こっていることが分かります。
 ただ都道府県別に見ると、1000人当たり114.0件の県もあれば、11.6件の県もあるなど、10倍の差があります。それだけ難しい問題だというわけです。

 さて、来年4月に設置が予定されている「こども家庭庁」は、いじめ対策が大きな役割の一つです。ただし、文科省と情報を共有し、連携して対応することになっています。
 元々、「こども家庭庁(こども庁)」の理念として、縦割り行政の解消が掲げられていました。
 虐待防止では厚生労働省から部署が移管され一本化される予定ですが、いじめ対策においては一本化されていないことを不安視する声もあるようです。
 今後の動向を注目する必要がありそうです。