神様はいつも見ている 26
~小説・K氏の心霊体験記~

徳永 誠

 小説・K氏の心霊体験記「神様はいつも見ている」をお届けします(毎週火曜日22時配信予定)。
 世界平和統一家庭連合の教会員、K氏の心霊体験を小説化したものです。一部事実に基づいていますが、フィクションとしてお楽しみください。同小説は、主人公K氏の一人称で描かれています。

第4部 霊界からのメッセージ
2. 死んでからでは遅い

 父が亡くなって心残りだったのは、「祝福」と呼ばれる統一教会(現・家庭連合)の重要な儀式に父を導くことができなかったことだった。

 統一教会の教義によれば、祝福を受けるかどうかによって、死後の世界、すなわち霊界における位置が違ってくるというのだ。

 祝福を受けているのといないのとでは、その違いに天地の差があるとされている。

 私は父に祝福を受けさせたかった。

 しかし父には統一原理の講義を私が一度したことぐらいで、それ以上は何もしてあげられなかった。

 「せめて略式ででも教会葬(統一教会における教会式の葬儀)で送ってあげたい」

 そう思った私は家族と相談し、葬儀は自宅で行い、朝7時から教会葬を、その後、仏式で葬儀を執り行った。

 葬儀には近所の人たちが手伝いに来てくれた。
 近所や親戚との付き合いの中でも冠婚葬祭は大事だ。とりわけ葬式が重要で、これに欠席すると、人間扱いしてもらえないようなところがある。

 手伝いに来てくれた近所の世話好きな婦人は、大阪のおばちゃんらしくあけすけに言った。

 「神道の教会で他の宗教の葬式をするなんて…」

 「考えてみれば、親不孝な話だよね。お父さんもあの世で嘆いているんじゃない?」

 「そりゃそうだ。がははは」

 私は聞き流した。
 恥ずかしげもなく、ぺちゃくちゃしゃべるおばちゃんたちだったが、悪気があるわけではない。ただ、思っていることを腹にためておけないだけなのだ。
 私は手伝ってくれることに感謝しながら、粛々と葬儀のプログラムをこなした。

 統一教会の葬式では、経を唱えるのではなく、祈祷をささげる。
 それは私の役目だった。この頃には祈り方にも年季が入っていたので、私は朗々と父のために祈祷した。

 「お父さん、これまで、私たちを育ててくれてありがとうございます。天国で幸せに暮らしてください」

 葬儀が終わった後に、一人のおばちゃんがやって来て、私が祈祷している時に不思議な光景を見たと、興奮しながら証言した。

 「たくさんの子供の天女が降りてきて、お父さんを抱きかかえて舞い上がっていった。ものすごく高い所に行ったような気がする。あんなの、初めて見た」

 その婦人は普段霊的なものが見えたり聞こえたりするタイプではなかった。

 婦人の話を聞いて、統一教会の葬式は、やはり一般的な葬儀とは違うものがあるのだなと私は確信した。

 「ならば、祝福を受けて正式な統一教会の葬儀で送ることができれば、父を霊界のもっと良い場所に行かせることができたのに…」

 私は後悔した。

 翌年の1992813日、父の初盆の時に父が霊界から降りてきて母に乗り移った。
 その時に父が伝えた言葉が今でも私の耳に残っている。それほど、インパクトが強い内容だったのだ。

 「死んだら分かるけど、それでは遅い」

 父は生前、統一教会の教えを受け入れるまでには至らなかった。
 私の力不足でもあるけれど、交通事故で九死に一生を得た父としては、命を助けてくれた神道の神様を裏切ったら申し訳ないという思いが強かったのだ。

 母も同様だった。父と母は、信者さんたちもいることだからと、姉や私たち夫婦のように、神道から統一教会の信仰に宗旨替えをするようなことはしなかった。

 神道の神様に今まで育てられてきた私も、両親の気持ちがよく分かるので、なかなか強く勧めることができないでいた。
 それで、祝福を受けることなく、父は霊界に旅立ってしまったのだ。

 しかし父は、死んで霊界に行ってみて、統一教会の祝福を受けるかどうかで、霊界での位置や状態に大きく差違があることを知ってしまったのだ。

 それが「死んだら分かるけど、それでは遅い」という言葉の意味だった。

 父は母を通してこう続けた。

 「あの子ら(姉や私)の言っていることは本当や。だから、できるなら祝福を受けさせてもらえ。天地の違いがある」

 これは兄夫婦に対して言った言葉だった。
 兄夫婦は驚いていたが、父の言葉を受け止めてうなずいた。

 普通の人ならば、このような霊的現象を目の当たりにしても簡単には信じないだろう。
 しかし兄夫婦もまた、母と共に30数年、日常的に霊的な現象と付き合ってきた。
 しかも、自分たちと同じように、統一教会に批判的だった父が霊界から伝えてきた言葉だったので、信じざるを得なかったのである。

 それを境に兄夫婦はがらっと変わった。
 それからわずか2週間足らず後の8月25日に韓国で行われた3万双の祝福結婚式に、兄夫婦は参加したのである。

(続く)

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 次回は、「妻の両親が祝福を受ける」をお届けします。