青少年事情と教育を考える 190
子供たちの特別の才能を伸ばす教育とは 2

ナビゲーター:中田 孝誠

 前回、特定の分野に飛び抜けた才能を持つ子供たちが、その才能を伸ばしていくための指導や支援の在り方について、文部科学省の有識者会議が議論を続けていることを紹介しました。

 有識者会議が行ったアンケート調査によると、子供たちが授業で周囲に合わせるよう言われたり、同級生と話が合わないなど、悩んでいる例も少なくありません。

 それに対して、保護者や教師は次のような支援が有効だったと述べています。

・自己肯定感が低いので、自信をつけさせる声掛け。

・正しい答えだけでなく、「なぜ、そのように考えるのか」という考え方を先生が発表させてくれて、クラスが非常に楽しかった。

・担任の先生が一緒に授業をすることを提案してくれて、授業展開や内容などを先生と一緒に考えた。その成功体験で自信がついた。

・暇になってしまう時間に、他の生徒を助けさせるなど役割を与えると、授業に前向きに参加できた。

・子供の状況について4年生から担任の理解が得られ、教師との信頼関係を築くことができた。教師のフォローで誤解されることも少なくなり、自信を取り戻した。

・学級の「係」制度で、自分の好きなことを利用してクラスのために貢献することができる。仲間と課外で活動したものを自由に発表させてくれる。

 教師の理解や支援が子供たちの成長を促すことが分かります。
 もちろん学校だけでなく、学校外で適応指導教室や博物館、大学の研究所、民間の学習機関(個別指導塾や珠算塾など)で先生や大学生と一緒に考えたり、自分のレベルに合わせた勉強ができたこと、同じような子供たちと過ごして自分の言葉で話すことができたなど、自信を持てるようになったことが紹介されています。

 子供を受け入れる良き人間関係や、成功体験を積み重ねることがポイントだと言っていいかもしれません。誰かのために行動することも大きな意義があるようです。
 こうした支援の仕方は、特異な才能を持った子供だけでなく、全ての子供の可能性を引き出す上で大切な支援だといえます。

 それには教師の力量が求められますが、今は教師が多忙で、必要な教師の数の確保に苦労する学校も少なくありません。そのため家庭や地域による支援が重要になってきます。

 文科省は、新しい時代の教育が目指しているのが「個別最適な学び」と「協働的な学び」です。「個別最適な学び」は、子供一人ひとりの特性に合った学び方を身に付けることです。

 一方の「協働的な学び」は、他者(クラスの友達、他の学年の子、地域の人など)と教え合い学び合うことです。つまり家庭や地域の人たちとの関わりが、子供たちの可能性を引き出すと考えられているわけです。