神様はいつも見ている 16
~小説・K氏の心霊体験記~

徳永 誠

 小説・K氏の心霊体験記「神様はいつも見ている」をお届けします(毎週火曜日22時配信予定)。
 世界平和統一家庭連合の教会員、K氏の心霊体験を小説化したものです。一部事実に基づいていますが、フィクションとしてお楽しみください。同小説は、主人公K氏の一人称で描かれています。

第2部 姉が統一教会へ
3. 聖姫大神の言葉か、姉の言葉か

 「大神さん(ここでは「須佐之男命/スサノオノミコト」のこと)は、そんなことは言ってないと思うよ」という聖姫大神(ひじりひめおおがみ)の言葉を聞いて、私は鬼の首を取ったように小躍りした。

 やはりそうだ。姉はうそをついている。スサノオの大神はそんなことは言っていないのだ。スサノオの大神自身の言葉ではないけれど、大神の眷属(けんぞく)で腹心ともいうべき聖姫大神が言うのだから間違いないはずだ。

 その時の私は、聖姫大神が言った内容をよく吟味していなかった。
 「言ってないと思うよ」の「思うよ」という曖昧な部分をすっ飛ばして「言ってない」と思い込んだのだ。

 冷静に考えていれば、聖姫大神はスサノオの大神の言葉ではなく、自分の推測を述べていることに気付いたかもしれない。
 だがこの時の私は、姉が神道の信仰をやめて、統一教会(現・家庭連合)に宗旨替えするということに激怒していたので、そう思いたかったのだ。

 私たちの言うことを全く聞こうとしない姉だったが、聖姫大神から直接言ってもらえば、姉の心も変わるはずだと私は考え、姉を呼びにいくことにした。

 すでに夜中の零時を過ぎていた。
 私は母に入っている聖姫大神に、「そのまま、いてくださいね。今、姉を起こしてきますから」と頼んだ。

 姉は聖姫大神の言葉を聞いて、「聖姫さんは知らないと思う。大神さんしか知らないことだよ」と言った。
 私には姉の言葉はその場限りの言い訳としか思えなかった。うそを重ねていると思った。

 なぜなら、聖姫大神は私たち姉弟を幼い頃から守り、育ててくれた大恩ある神様である。私が聖姫大神と姉のどちらの言葉を信じるかといえば、当然、聖姫大神だった。そんな大恩のある神様を裏切ってまで、他の宗教へ行こうとする姉の気持ちが全く理解できなかった。

 「姉ちゃんの言っていることは全く理解できない。狂ってる」

 「どこが狂ってるというの? スサノオの大神さんがそうおっしゃったのよ」

 「大神さんがそんなことを言うはずがないやろ! 事実、聖姫大神さんは言っていないと言ってるやろ!」

 「だから、聖姫大神さんは知らないのよ。スサノオの大神さんから私が直接言われたんだから」

 「そんなこと信じられない!」

 「信じられないなら、それでもいいわ。私は大神さんの言うとおりにさせてもらいますからね!」

 私たち家族全員の反対にもかかわらず、姉は統一教会へ通うことをやめなかった。

 私は姉を罵(ののし)った。神様への恩を忘れた姉を裏切り者と断罪した。

 「二度と姉ちゃんの顔は見たくない!」

 私は怒りのあまり、そんな捨てぜりふも吐いた。

 統一教会の信仰を持った姉は、当初、親戚中から猛反対を受けた。統一教会に通えないようにと、叔父の家に軟禁されたこともあった。しかし姉の信念は変わらなかった。家に閉じ込められても、姉はトイレからこっそりと逃げ出したのだ。

(続く)

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 次回は、「神棚の中の『原理講論』」をお届けします。