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氏族伝道の心理学 12
史上初の機能不全家族

 もう一度皆さまにぜひ読んでいただきたい光言社書籍シリーズ「氏族伝道の心理学」をお届けします。祝福家庭の心の悩みをみ言と心理学の両面から分析、氏族伝道勝利の方法を導き出します。

大知 勇治・著

(光言社・刊『成約時代の牧会カウンセリング 氏族伝道の心理学』より)

第2章 心の問題と復帰歴史

史上初の機能不全家族
 ところで、一つ考えておかなければならないのは、ルーシェルが最初に愛の減少感を感じたのは、まだ堕落の前だったということです。堕落前に破壊衝動を感じることがあったのでしょうか。この点については、またあとで説明します。

 堕落後のアダムとエバの心情を考えてみましょう。堕落ののち、神様は「創世記」でエバに対して、「わたしはあなたの産みの苦しみを大いに増す。あなたは苦しんで子を産む。それでもなお、あなたは夫を慕い、彼はあなたを治めるであろう」(第三章十六節)とおっしゃり、アダムに対して、「あなたが妻の言葉を聞いて、食べるなと、わたしが命じた木から取って食べたので、地はあなたのためにのろわれ、あなたは一生、苦しんで地から食物を取る。地はあなたのために、いばらとあざみとを生じ、あなたは野の草を食べるであろう。あなたは顔に汗してパンを食べ、ついに土に帰る、あなたは土から取られたのだから。あなたは、ちりだから、ちりに帰る」(第三章十七節〜十九節)とおっしゃっています。

 これを聞いた時のアダムとエバはどんな気持ちだったでしょうか。良心の呵責(かしゃく)もあったでしょうし、不安でいっぱいだったに違いありません。

 エデンの園を追われて新しい生活を始めたアダムとエバの家庭は、どのような家庭だったのでしょうか。

 将来への見通しも希望もなく、何をどうして良いかもわからず、混乱していたでしょう。不安は怒りに変わります。創造理想から外れて堕落してしまった不安はとても大きなものだったでしょうから、怒りも大きなものであり、家庭内にあふれていたと思われます。

 アダムは、堕落してしまった不安を思い出して感じる時には、不安は怒りとなって、自分を誘惑したエバに向けられていたことでしょう。エバを大声で罵倒したかもしれません。怒りがコントロールできなくなり、エバに対して殴る蹴るなどの暴力を振るっていたかもしれません。エバの顔を見たくない、と思えば、外に出て、何日も帰ってこない日が続いたこともあったでしょう。

 エバはどうだったでしょうか。エバの不安はアダムよりも大きかったかもしれません。アダムと同じように将来への不安は大きかったでしょうし、さらに、堕落の原因となってしまったという良心の呵責はエバ自身の気持ちを追い込んでいたでしょう。それに加えて、アダムの怒りを受けなければならなかったのです。

 当然、エバの中の大きな不安も怒りとなります。では、エバの怒りはどこに向けられたのでしょうか。おそらく、初めての子供、カインに向けられたでしょう。エバは、イライラした時、カインに当たっていたかもしれません。もしかしたら、手を上げていたかもしれません。不安でいっぱいになったときには、カインの世話もできずに、ほったらかしにしていたかもしれません。食事だって準備しなかったときがあったかもしれません。そんな時は、カインが良い子にしていても、母親であるエバは振り向いてくれなかったでしょう。わざと悪いことをして気を引こうとしたかもしれません。

 つまり、人類の最初の家庭であったアダム家庭は、家庭内暴力と児童虐待に満ちた機能不全家族であったであろうと考えられるのです。

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 次回は、「不安と怒りから見たカインとアベルの物語」をお届けします。


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