2021.12.17 17:00
青少年事情と教育を考える 183
「褒めて育てる」条例
ナビゲーター:中田 孝誠
全国の自治体では、「家庭教育支援条例」や「青少年健全育成条例」など、家庭や子育てを支援する条例が制定されています。「家庭教育支援条例」は現在までに9県6市で制定されました。
そうした条例の一つとして、子供を褒める条例を制定している自治体があります。
例えば、鹿児島県志布志市は「志布志市子ほめ条例」を2006年に施行しました。目的は、子供たちの個性や能力を発見し、それを表彰することによって、地域ぐるみで子供たちを健全に育てようというものです。
表彰する項目には、「ボランティア賞」「親切賞」「親孝行賞」「友情賞」「あいさつ賞」「創造賞」「勤労賞」「読書賞」「学芸賞」「スポーツ賞」などがあります。
芸術やスポーツだけでなく、日常生活の中で子供たちの良さを見つけようという狙いが表れています。
そして、学校と家庭、地域、さらには関係団体が協力して取り組むことをうたっているのも、大きな特徴です。最近、社会全体で親を支えて子育てに関わる「共同養育」という言葉が使われますが、それにつながる取り組みだといえます。
また、岡山県井原市の「子誉め条例」(2004年)も同様の趣旨で制定されています。
「褒めて育てる」ことは、子育ての大切な知恵です。孤立した子育てが問題となる中、「褒めて育てる」ことを地域全体で実践し、子供たちの成長を支えようというわけです。
ちなみに、「子誉め条例」という名前ではありませんが、兵庫県多可町には「多可町一日ひと褒め条例」(2019年)があります。
こちらは「一日に一度は人を褒めるまたは感謝の気持ちを伝えることにより、互いの心を尊重し、明るく前向きな活力ある社会を築くこと」を目的にし、お互いが他の人の良い言動や成果に目を向けて、感謝を伝えたり、積極的に称賛したりしようと呼び掛けています。
こうした条例に対して、“強制”などと言う人もいるでしょう。しかし、SNSなど匿名で他人を誹謗中傷するような風潮がある現在、他の人を尊重する気持ちを育て、より良い社会にしていくという意味で、地方からの貴重な取り組みではないでしょうか。
いずれにしても、「家庭教育支援条例」などの条例は、自治体が家庭と次世代育成を重視する姿勢を表すものです。