孝情を育む 21
子供にもちゃんとあやまる

家庭教育部長 蝶野知徳

 『ムーンワールド』で連載中の蝶野知徳・家庭教育部長による子育てについてのエッセーを、Blessed Lifeでも隔週でお届けします!
 孝情を育む子女教育を考える上で、どんな思いで向き合えばいいのかを端的に分かりやすく解説します。

一人格として価値視する
 子供は、親の過ちをよく見ています。子供と公園で遊ぶ約束を守れなかった、一生懸命に描いた子供の絵を間違って捨ててしまったなど、やむを得ない親の事情があったにせよ、子供に「いけない」と言い聞かせていることを、親の側がやってしまうことがあると思います。子供に対しては「悪いことをしたら、ごめんなさいでしょ!」と、いつも言っておきながら、親自身の過ちはあやまらないというのは良くありません。親にとってはささいな約束であっても、子供にとってはとても大きな約束である場合も多いのです。小さな命に対しても、大人と同じ一人格として価値視して対することが大切です。

 ある父母は、「子供にあやまってしまうと、子供にばかにされてしまう。上下関係が狂って下に見られてしまう」と言っておられました。本当は、間違いを認めてあやまるべきです。正直にあやまることで、かえって親が「正しい姿」を示したということになるのです。

自分は親にとって大切な存在
 親が自分にちゃんとあやまってくれたという体験のある子供に聞いてみると、謝罪した親への評価は下がってしまうのでなく、間違いなく上がっています。自分の命、存在を貴く見てくれているという実感になっているのです。弁解したり、あやまらなかったりする親の姿は、親を愛している子供の心を塞いでしまうことにもなりかねません。

 子供に目線を合わせて、しっかり心から「ごめんね」「お母さんが悪かったわ」と、ちゃんとあやまれば、「自分は、お母さんにとって価値のある、大切な存在なんだ」という、自分に対する親の愛を確かめる体験になります。子供も、自分が悪かったときには、「正直にあやまろう」ということを学びます。

自己肯定感を育む愛の表現
 親は、子女への実体の教材が、しつけの「言葉」ではなく、まず「自分自身」であることを、よく理解することが大切です。

 「ありがとう」や「ごめんなさい」は、とても短くシンプルな言葉ですが、子女にとっては大きな愛の体験や、自己肯定感を育んでいくことのできる大切な愛の表現にもなっているのです。

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 次回は、「子女が感動すること」をお届けします。