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世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

中国共産党、「第3の歴史決議」の意義

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、11月8日から14日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 中国共産党「6中全会」開幕(8日)。フランス、原発新設を再開へ(9日)。6中全会、歴史決議を採択し閉幕(11日)。バイデン大統領支持率、最低を更新(14日)、などです。

 中国共産党は、重要方針や人事を決める会議、「6中全会」(第19期中央委員会第6回全体会議)を11月8日に開幕し、11日に40年ぶりとなる第3の「歴史決議」を採択して閉幕しました。注目されている歴史決議文はまだ公表されていません。

 中国でこれまで歴史決議が採択されたのは、毛沢東(1945年)の時と鄧小平(1981年)の時の2回で、いずれもその後、権力基盤が盤石になったといわれています。

 今回の歴史決議は、習近平総書記が両者に並ぶ権威を確立する意義があると見られており、来年秋の党大会での異例の3期目就任を固めたと見ることができるのです。

 中国は今、重要な転換期にあります。社会主義の理想である平等社会=「共同富裕」実現に向かって見える形で習近平指導部は経済界や芸能界などに「介入」しています。共同富裕国家こそ社会主義現代化国家なのです。

 この点について6中全会閉幕後の政府コミュニケ(公報)は、歴史決議は「党の100年奮闘の重大な成果と歴史的経験に関する決議」であり、「建党100年という歴史的条件下で社会主義現代化国家の全面的建設の新たな道のりにつき、新時代に中国の特色ある社会主義を堅持し発展させるために必要なことである」としているのです。

 鄧小平の歴史決議は、改革開放政策の定着、社会主義初期段階における生産力の向上を狙ったものでした。結果として、生産力を表す指標の一つであるGDP(国内総生産)において2010年に日本を抜き、すでに米国のGDPの7割近くに到達しています。政府コミュニケは「奇跡」の発展を遂げたとしています。

 このたびの第3の歴史決議は、習氏が総書記に就任した2012年以降に重点を置き、来年の党大会以降も最高指導者にとどまることを意義付け、社会主義の理想である共同富裕へと駆け上ろうとするためのものと見ることができます。そのためには強力な指導力が必要となります。

 政府コミュニケは、6中全会の成果の要約として、二つの確立を上げています。
 「習近平同志の党中央・全党の核心地位を確立」と「『習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想』の指導的地位を確立」です。

 中国はこれから、中国的諸事情を踏まえたマルクス主義の歴史観=「唯物史観」の実証実験を行おうとしています。
 社会主義社会の実現は、高度に発達した資本主義段階を踏まえてのみ可能であるというのが唯物史観です。鄧小平の社会主義初期段階から習近平の社会主義現代化への転換点に立っているのです。それ故の歴史決議なのです。

 しかしこの実験は失敗に終わるでしょう。その理由は共同富裕実現のための上からの変革は、生産力向上の基礎的条件である言論・結社・思想・信条の自由を拘束するからです。中華人民共和国の崩壊が近づきつつあるのです。