2021.09.07 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
菅義偉首相、自民党総裁選辞退を表明
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、8月30日から9月5日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
アフガンから米軍が完全撤退(8月30日)。英空母、韓国海軍と初の共同訓練(31日)。韓国メディア懲罰法案、採決延期(31日)。中国、習主席の政治理念を学ぶ授業が必修に(9月1日)。米テキサス州で中絶禁止法が発効(1日)。菅義偉首相が次期自民党総裁選不出馬を表明(3日)、などです。
菅義偉首相が、次の自民党総裁選に出馬しない意向を示しました。
9月3日午前11時半過ぎ、自民党本部で開かれた臨時役員会で首相が立ち上がり、「総裁選に出ずに、自分の任期中はコロナ対策に専念したい。ついては、お願いしていた役員人事を撤回したい」と語ったのです。
その後官邸で、記者団の質問に自民党総裁選に出馬しない理由を、「新型コロナウイルス対策と(総裁選の)選挙活動は莫大なエネルギーが必要だ。両立はできない。感染拡大を防止するために専念したい」と述べたのです。
これまで菅氏は、総裁選出馬について「時期が来れば当然のこと」と繰り返してきました。ところが、総裁選に立候補した岸田文雄前政調会長が公約として党役員改革案を提示したのです。それは、党役員の任期を「1期1年、連続3期まで」とするものでした。これは明らかに二階俊博幹事長(現在5年を過ぎている)の「続投」を事実上否定するものだったのです。
総裁選への対応として先月末、二階俊博幹事長の交代を決断。6日に党四役を全て交代させて、内閣改造も一部検討し、イメージを刷新して党内外の支持を再獲得する計画でした。しかし、一人動かせば他の人を引っ張ってこなければなりません。その人事案がうまく通らなかったのでしょう。小泉進次郎環境大臣の説得ももちろんあったでしょう。
この一年で成し遂げたこと(携帯電話料金の値下げなど)や入口に立ったばかりのデジタル庁の始動、最も重要な新型コロナ・デルタ株対策により収束への道筋を立てなければならないとの「責任感を強く持っている」が故に、求心力を失った自分が退いて後継者に託す道を決断したものと思います。共産党の言う政権投げ出しなどではないのです。
求心力の低下は、コロナ対策に対する国民の不満もありますが、選挙で結果を出せなかったことが大きかったと見るべきでしょう。
国政三選挙(北海道二区、長野と広島の参院選)での全敗、東京都議選での事実上の敗北、そして8月22日投開票の横浜市長選です。首相が全面支援したにもかかわらず小此木八郎氏が落選。首相の地元での敗北は大きかったのです。
その結果、次期衆院選の「顔」としては菅氏では戦えないとの認識が支配的になってしまったのです。
9月6日付の「読売」に、本社世論調査(9月4、5日実施)の結果が載っています。
「次の首相」として誰がふさわしいかとの設問に対して、河野太郎行政・規制改革相が23%、石破茂元幹事長が21%、岸田文雄前政調会長12%、となっています。
さらに「次の衆院比例選への投票先は」との設問に対して、自民が42%(前回37%)、立民11%(前回12%)、共産5%(前回5%)などとあり、政党支持率においては自民36%(前回32%)、立民7%(前回5%)、共産5%、維新2%などとなっています。
自民党は支持率が上昇し、野党の支持率はいずれも一桁台で低迷しています。野党は衆院選戦略の練り直しが必要となっているのです。菅氏の判断はプラスに出ているということです。