青少年事情と教育を考える 169
子供と社会全体のウェルビーイングを大切にする

ナビゲーター:中田 孝誠

 今年6月、政府の教育再生実行会議が新しい教育提言をまとめました。そのキーワードが「ウェルビーイング」です。

 ウェルビーイングは、心身ともに良好な状態にあるということです。簡単に言えば「幸福」ということになります。
 ちなみに世界保健機関(WHO)憲章では、健康の定義を、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも精神的にも社会的にも、全てが満たされた状態(well-being)にあること」と述べています。

 国際的には、経済協力開発機構(OECD)が2030年に向けた教育提言でウェルビーイングの言葉を使っています。

 今回の教育再生実行会議の提言は、子供たちの幸福度や自己肯定感の意識をどう高めていくか、過度な横並び意識を改善して一人一人の自律性を高め、未来を切り拓(ひら)く力をどのように育てていくかといった課題を考える上で、一人一人の幸せとともに社会全体の幸せでもある「ウェルビーイング」の理念の実現を目指すことが重要だと強調しています。

 この幸せは経済的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさや健康も含まれます。こうした幸せが実現される社会が、持続可能な社会になるというわけです。

 そしてそのために、一人一人が自分の身近なことから他者のこと、社会のさまざまな問題まで関心を寄せ、社会の当事者として主体的に考え、責任ある行動をとることができるようにすることが大切だと述べています。

 ウェルビーイングは、子供の成長を総合的に捉え、子供が健康で心身とも安定した生活を送ることができる環境をつくる考え方だとも言えます。

 子供の幸福を第一に考えるというのは、社会全体が共有できることです。ただ、政府が枠組みを打ち出しても、教育現場で実行できないことも少なくありません。これを実現するためには、家庭教育の改善も望まれます。