親育て子育て 8
子供を読書好きにするには

(APTF『真の家庭』178号[2013年8月]より)

 もう一度皆さまにぜひ読んでいただきたい、編集部イチオシ!なコンテンツをご紹介。
 「親育て子育て」を毎週木曜日配信(予定)でお届けします。

ジャーナリスト 石田 香

幼児期の絵本の読み聞かせから始めよう

母の寝物語

 今回は夏休みの季節でもあり、少しいじめなどの問題から離れて、子供と読書について考えてみたいと思います。子供が心身ともに健康に育つことで、いじめや不登校などに対応できる力を蓄えることができるようになりますから、方向としては同じことです。

 読書の目的は自分の言葉を豊かにし、想像力を高めることにあります。読書は人の心を育て、必要なことを学んだり、情報を得ていく上で、生涯を通して重要です。子供時代の読み聞かせは、子供が本好きになれる大きなきっかけにもなります。

 子供は物語が好きです。私の母の記憶も、一緒に寝ながら、いろいろな物語を話してくれたことにつながります。その話を材料に、想像の翼を自由に広げるのがとても楽しかったのを覚えています。私の家は農家で、家には本もなく、両親が読書していた姿も見たことがありませんでしたが、母は祖父母などから語り継がれた物語を覚えていたのでしょう。

 小学校2年生の時、3匹の小犬が川で魚取りをするという話を聞いて、それを絵に描く授業がありました。クレパスを使って初めて本気で描いたような絵で、それが褒められたことから、絵が大好きになりました。

 小学生になってから都会にいる伯父さんが時々、漫画雑誌を送ってくれていたのですが、3年生の時、母に「本が読みたいから、本を送ってください」って頼んだらと言われて、そうしました。すると送られてきたのが、『偉大なる王(ワン)』という、中国東北部にいた虎の物語です。それがきっかけで、高学年の頃は『クオレ』などを読むようになりました。

 中学生になると、担任の国語教師の影響で教科書に出てくるような日本文学を読むようになり、高校3年生の頃から、にわかに社会問題に関心が向いて、岩波新書などを手に取るようになりました。振り返ってみると、そうした読書歴の基礎が、母の寝物語にあったように思います。

テレビやゲームの危険性

 今の子供たちにとって大きな問題は、ゲームやテレビ、スマートフォンなど映像メディアの影響を強く受ける環境にあることです。刺激的な光や音を伴う映像は文字よりも印象が強く、そのイメージが心に焼き付いてしまったりします。

 幼児の心の発達は、言葉の獲得によって少しずつなされていきます。最初は何だか分からなかったものにも名前があり、その意味を知ることで、理解を深めていくのです。映像もそれを言葉で表現することで、自分の記憶としてしまい込まれていきます。映像の刺激が強すぎると、そのプロセスがおろそかになってしまうのです。

 その危険性を指摘したのが、森昭雄・日本大学教授の『ゲーム脳の恐怖』です。ゲームをしている時の子供の脳波を調べると、認知症の人と同じで、考える機能がほとんど働いていないという指摘でした。同書によると、ゲームをし過ぎると、思いやりや想像力、物事を考えるという人間らしい機能をつかさどる脳の前頭前野が発達しなくなるそうです。キレやすい子供が増えた背景には、ゲームの流行があるのかもしれません。

 母親が家事などの忙しさから、テレビの前に幼児を座らせ、テレビに子守りをさせる弊害は以前から指摘されていました。幼児は母親などとの会話の繰り返しで言葉を覚えていくのに、テレビは一方的に語り掛けてくるだけですから、言葉の獲得が遅くなってしまうのです。

読書が心を育てる

 毎朝、授業の初めに10分間の読書をしている小学校があります。本は子供たちが好きな本を家から持ってきたり、図書館で借りたりしています。続けていると、子供たちの学習姿勢がよくなり、乱暴な言葉が聞かれなくなるという効果が報告されています。それは、読書によって人間らしい心が育つからでしょう。

 そうした子供の読書の始まりが、幼児期の読み聞かせです。子供は本を読んでもらうのが大好きです。教室で読み聞かせをしている先生によると、子供たちの心が落ち着き、授業にも集中できるようになるそうです。読書を通して、人の話を聞くことや、微妙な人の気持ちが分かるようになるからです。

 それが何かの物語だと、子供たちは物語に登場する主人公と本の中を一緒に歩くことによって、強さや正しさ、優しさ、美しさなどを感じ、自分なりに人間としての生き方を見つけていったりします。

 読書には国語の成績が上がるという効果もあります。と同時に、国語の理解力はすべての科目に共通していますので、全体的な成績の向上にもつながります。でも、読書はそれ以上に、一生続く大切な趣味の一つとして考えるべきでしょう。

 小さい子供への読み聞かせは、親子の心の交流の時間でもあります。子供たちはお父さんやお母さんが大好きなので、その話を聞くのも大好きです。

 絵本は子供向けであっても、大人が読んでも意味があり、面白い本が多くあります。それらを感情を込めて、読んであげると一層印象に残ります。そして、どんな風に感じたか、話し合うことも大切です。自分の気持ちを言葉に表現していくことで、子供たちは自分の気持ちを率直に相手に伝えられるようになります。そうした能力が、学校に上がって集団生活をするようになったとき、とても重要になってきます。