世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

G7声明、菅政権への大きな後押しに

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、6月7日から13日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 韓国ソウル中央地裁、元徴用工の訴え却下の異例判断、最高裁判決と「正反対」(7日)。
 五輪不参加「検討せず」韓国政府(8日)。米英が「新大西洋憲章」署名、中ロに対抗し民主主義守る(10日)。G7サミット会議開催(11日)。香港の周庭氏が出所、何も語らず(12日)。G7サミット共同声明発表(13日)、などです。

 英国南西部のコーンウォールで6月11日から13日まで、G7サミットが開催されました。結果は全体的に「満足」(バイデン大統領)のいくものだったと言えるでしょう。
 特に日本の菅首相にとっては東京五輪・パラリンピック開催に対して「全首脳から力強い支持」を得ることができたことは大きな成果でした。

 さらに菅氏は連日のように、中国を名指しで批判しG7の結束を促しました。「G7の価値観」という言葉を何度も用いており、結束のキーワードになったのです。そして13日午後の共同宣言につながっていきました。

 ここで、共同宣言の主なポイントを列記します。

①台湾海峡の平和と安定の重要性を強調。両岸問題の平和的解決を促す(5月上旬のG7外相会合と同様の表現に)。

②自由や平等、人権の保護などの力を使って挑戦に打ち勝ち、民主主義国の結束を促す。

③中国の世界経済の公正性や透明性を傷つける慣行や市場をゆがめる政策に対して、G7が集団的に対応する。

④途上国や新興国に対する上質で透明性の高いインフラ投資に取り組む。G7で作業部会を立ち上げ、秋までに具体策を報告する。5G分野など通信機器の供給網の協力をする。

⑤新型コロナウイルス対策で途上国へ10億回分のワクチン提供に合意。

⑥東京五輪・パラリンピックを新型コロナ克服に向けた世界の団結の象徴と位置付け、G7として安全、安心な方法での開催への支持を表明。

⑦経済・雇用面において、サプライチェーンのリスクに対処するメカニズムの検討。

⑧エネルギーについて、排出削減対策のない石炭火力への新規の国際支援を年内に終了する。

 などです。

 台湾外交部は13日、G7サミットの共同宣言を歓迎し、「台湾海峡の平和と安定を重視する具体的な行動をとったことを非常に歓迎し、心から感謝する」とのコメントを発表しました。

 一方、中国の楊潔篪政治局員は11日、ブリンケン米国務長官との電話会談で「(多国間主義とは)小さなサークルの利益に基づいたグループ政治による偽の多国間主義ではない」と述べ、G7サミットをけん制しました。

 G7サミット会議を受け、今後、米中間、日中間がどのように変化していくのか慎重に見極め、わが国は「G7の価値観」(菅氏)にのっとったぶれない外交・安保政策を展開していかなければなりません。