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【テキスト版】
ほぼ5分でわかる介護・福祉QA

第8回 退院した高齢の親を自宅で介護することになりました

ナビゲーター:宮本 知洋(家庭連合福祉部長)

(動画版『ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A』より)

 今回は、「退院してくる高齢の親を自宅で介護することになりました。家族だけでは不安なのですがどうしたらいいでしょうか?」という質問です。

 「病気や障がいがあっても住み慣れた家で暮らしたい」「人生の最期は自宅で迎えたい」と希望されるかたは多くいます。

 しかしその一方で、介護する側の家族からは「願いをかなえてあげたいけれど、ずっと付き添うのは難しい」「医療的な介護はできない」「急に状態が悪くなったら、どうしていいか分からない」など、自宅で介護することへの不安や葛藤の声がよく聞かれます。

 在宅での療養を支えるサービスには、通所やお泊り型のサービス、福祉用具のレンタルなどがありますが、それに加え、訪問看護や訪問リハビリを利用するという方法もあります。

 医療保険では訪問診療、訪問歯科診療、訪問看護、介護保険では訪問看護、訪問リハビリ、訪問介護、訪問入浴などの訪問系サービスを受けることができます。

 訪問看護は医療保険、介護保険のどちらかの利用になることが一般的ですが、健康状態や年齢によって適用される保険や内容が異なります。

 自分では判断しにくいと思いますので、利用したい場合はケアマネージャーや病院、自治体の相談窓口に連絡して相談しましょう。

 訪問看護の内容は、健康状態の観察、医師の指示に基づいた医療的処置、服薬の確認や指導、医療機器の管理、食事や排泄などの介助や指導、床ずれの処置・予防のための助言、関節拘縮(こわばり)予防や身体・生活機能回復の訓練、認知症介護の相談、家族の精神的支援、ターミナルケアなど、多岐にわたります。

 また、主治医に直接聞きにくい疑問に答えてくれたり、気軽に相談に乗ってくれたりします。
 24時間対応の訪問看護事業所もあり、緊急な際には医師と連絡を取って必要なケア処置をしてくれます。

 次に訪問リハビリですが、これは理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といった専門家が自宅を訪問して実施してくれるものです。

 高齢者のリハビリは、残存機能を維持することによって日常生活の自立と質の向上を目指し、生きがいを支援することが目的になっています。

 具体的な内容としては、身体機能の改善、物理療法などによる痛みの緩和、摂食嚥下(えんげ)機能の改善、日常生活動作の指導、福祉用具の利用や住宅改修などの相談、生きがいや趣味、社会参加促進のための助言や、ご家族への助言などを行っています。

 訪問看護も訪問リハビリも、利用に当たっては主治医から指示書を書いていただく必要があります。

 介護保険では他のサービスとの併用もあるので、担当ケアマネージャーに相談し、主治医との連絡や必要な介護計画を立ててもらうようにしましょう。

 ただし、訪問看護や訪問リハビリを利用するとしても、在宅介護の主役はあくまでもご本人とご家族です。
 これまでの人生で築いてきた価値観や絆は、サービス提供者の知識や経験よりも、ずっと重く尊重されるべきものです。

 何を優先するかをまずご家族で話し合い、決められないことがあったり、迷ったりした時にはケアマネージャーやスタッフに遠慮なく相談する、というのがよいでしょう。

 自宅で介護をするのは大変なことですが、愛する家族とより多くの時間を共有し、四大心情を育んでいく良い機会であり、その体験が人生をさらに豊かにしてくれる可能性もあります。

 行政のサービスや医療福祉従事者のサポートを受けながら、ご本人とご家族が安心し、納得できる在宅介護生活を送ることが重要だと思います。
 もしご本人が病院に行けない場合、訪問診療をお願いする方法もあります。