世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

2回 問題は中国の不公正取引慣行~正せるのは米国のみ

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 「世界はどこに向かうのか ~情報分析者の視点~ 」は、毎週火曜日の配信を予定しています。前週の内外情勢のポイントとなる動向を分析、解説するコーナーです。

 4月2日~8日を振り返ります。
 国内では陸上自衛隊「イラク日報」の存在確認(2日)、海外では米中「貿易戦争」の懸念(2日~5日)、韓国の朴槿恵前大統領にソウル中央地裁が懲役24年、罰金180億ウォンの判決言い渡し(6日)、などが主な出来事でした。
 今回は、米国と中国の「貿易戦争」について説明してみます。経緯を見ると、米政権が3月下旬、鉄鋼とアルミニュウムの輸入制限を発動。さらに3日に約1300品目の中国製品に25%の追加関税を課す制裁案を公表しました。それに対して中国政府は4日、米国からの106品目の輸入品に25%の関税を課すと発表。5日、トランプ氏が追加関税1000億ドルの検討を指示したのです。

 背景を説明します。「これはトランプ氏の中間選挙(今秋)対策だ」などの意見もありますが、それは一面的な見解と言わざるを得ません。本質的問題は、中国の不公正な取引慣行にあるのです。
 例えば、企業が中国に進出する際、合弁会社の設立などを通じて技術供与を強要される。中国での経済活動で得た個人情報や重要データを海外に持ち出してはならない、などです。「知的財産権の侵害」ということです。

 中国は2001年、世界貿易機関(WTO)に加盟し、西側の経済貿易のルールを基本的には受け入れて経済を発展させてきましたが、資本主義国でも民主主義国でもなく、共産党による独裁統治の国です。国の安定的発展が最優先されるため、国有企業を優遇し自国の雇用や産業を守る政策をやめられないのです。

 結果として世界は不利益を被ることになっています。この動きを是正することができる国は世界でただ一つ、中国よりも経済力が強い米国しかないのです。米国のためであると同時に世界のためである、という点を見逃してはなりません。