シリーズ・「宗教」を読み解く 165
復活節を記念して③
復活節の典礼

ナビゲーター:石丸 志信

 キリスト教の伝統的な暦では、復活祭から聖霊降臨の主日までの50日間を復活節として祝う。

 カトリック教会の年間主日のミサでは、前半部分の「みことばの祭儀」において三つの聖書朗読がある。それは、旧約聖書、新約聖書の書簡、福音書の三つ。礼拝の本質的な要素は「みことば」を読むことを通して神の御業を想起するところにある。

 旧約の出来事は、イエス・キリストの予型であり、福音書はイエス・キリストの出来事を、そして、使徒たちの書簡から福音がどのように世界に広がり伝統が形成されていくのかを学んでいく。
 みことばの朗読を通して、救いの御業がイエス・キリストによってある部分成就し、さらに再臨の時の完成に向かって進んでいくことを感じ取ることができる。

 復活節においては、三つの朗読は使徒行伝と使徒書簡、福音書から選ばれる。
 イエス・キリストの復活と聖霊降臨を体験した弟子たちがどのように変わり、どのように行動したのかに焦点を当て、現代のわれわれも彼らの生き方に倣うよう促される。

 礼拝行為の中で起こることは、単なる歴史の回顧ではなく、神に選ばれた民が体験したその出来事をありありと思い起こし、あたかも自分が体験したかのごとくにするものだと言える。

 「救いの歴史」の体験の想起は神様の臨在を体験すること。それが何百年、何千年、神の民を導く伝統となってきた。