青少年事情と教育を考える 153
自治体のアウトリーチ型家庭教育支援

ナビゲーター:中田 孝誠

 コロナ禍で家族の絆が深まったという家庭も多くあります。
 一方、児童虐待やDV(ドメスティック・バイオレンス)など家庭内で起きている問題が外部から見えにくくなっているのではないかともいわれています。

 保護者同士の交流の機会が減り、育児の孤立化、子供の生活習慣の乱れやゲーム依存なども課題になっています。

 各都道府県と市区町村では、いろいろな形で家庭教育支援を行っています。
 そうした状況を文部科学省がまとめ、今年2月に発表しました。調査が行われたのは昨年8~9月です。

 この中で、家庭や学校、企業などを訪問し、何らかの課題を抱えている保護者に情報提供や相談対応、学習機会を提供する「アウトリーチ型支援」(訪問型家庭教育支援)に取り組んでいる自治体は、都道府県が27(全体の57%)、市区町村では517(同34%)でした。

 場を設定して、ただ待っているだけでは、支援が必要な人はやってきません。こちらから積極的に出掛けていこうという取り組みです。

 例えば、不登校の児童生徒を持つ家庭を訪問して保護者の悩みや不安を傾聴します。
 アウトリーチ型支援を行っている自治体では、「子育ての悩みや不安の解消」「支援を必要とする家庭の把握」「保護者を学びの場などの拠点につなげる」「学校と家庭の関係の構築」といった成果があると評価しています。

 一方、課題は「人材の確保・養成」や「予算の継続的な確保」「保護者との信頼関係の構築」です。

 家庭は社会の最小単位です。その家庭を支援して課題を解決することは、社会の安定にもつながります。その意味でも家庭支援は、国と自治体にとって最も重要な政策と言っていいでしょう。