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中和新聞セレクト Vol.1
真の世界平和を求めて~人類的課題と根本的解決の道

 統一運動の情報から国内外のニュース、各種講座に至るまで、さまざまなコンテンツを毎週2回(火、金)配信している『中和新聞』。Blessed Life編集部が同記事のアーカイブスからおすすめのコンテンツをセレクトして皆さまに紹介します!
 第1弾は「真の世界平和を求めて~人類的課題と根本的解決の道」(ナビゲーター:魚谷俊輔氏)のシリーズを毎週水曜日(予定)にお届けします。
 同コンテンツは『中和新聞』2017年5月~2019年11月に全24回で配信されたシリーズです。

第5回 宗教間の和解による平和実現を

(中和新聞 2017年9月8日 通巻992号より)

 今から16年前の2001911日、米国で同時多発テロが起き、世界は大きな衝撃を受けました。その背後に、米国に反感をもつイスラーム(イスラム教)の過激派組織があると指摘されると、キリスト教を中心とする西洋社会とイスラム世界の対立が先鋭化。世界は今もテロの脅威におびえています。今回(第5回)は、この事件の背景を分析するとともに、文鮮明師が主導されてきた宗教間の和解による平和実現の道を紹介します。

ハンチントンが唱えた「文明の衝突」
 「9.11米同時多発テロ」が起きたとき、多くの知識人は、サミュエル・ハンチントンが唱えた「文明の衝突」という言葉を思い出しました。そしてこの事件を境に、人々の世界平和に対する考え方が大きく転換されたのです。

 第2次世界大戦が終わると、世界は「東西冷戦」時代に突入しました。その頃、世界平和の問題といえば「民主主義」対「共産主義」というイデオロギーの対立だったのです。

 しかし、1989119日にベルリンの壁が崩壊し、19911225日にソビエト連邦が崩壊することによって、冷戦時代は終焉。「新世界秩序」の出現が期待されるようになります。

 冷戦終了後、しばらくは、「21世紀の世界は、民主主義と市場経済がグローバルに定着するだろう」と考える、米国的な世界像がもてはやされました。これに対して大きな「ノー」を突きつけたのがハンチントンです。

 彼は著書『文明の衝突』(1996年刊)で、21世紀の世界は、民主主義によって世界が一つになるのではなく、数多くの文明の違いに起因する、分断された世界になると主張しました。

 すなわち、ポスト冷戦時代には、異なる文化をもつ国家同士が対立を深めていくだろうと予言したのです。9.11米同時多発テロは、この『文明の衝突』の予言が成就したと考えられました。

▲中東平和イニシアチブの一環としてエルサレムの旧市街で平和行進を行う平和大使ら(2003年10月22日、筆者撮影)

■宗教間の対立が大きくクローズアップされる
 『文明の衝突』では、世界が主な9つの文明圏(西欧、東方正教会、ラテンアメリカ、イスラム教、アフリカ、ヒンドゥー教、仏教、中国、日本)に分割されています。

 このように文明圏を分けている中心的な要素は宗教です。したがって、文明の衝突とはすなわち「宗教の衝突」を意味するわけです。

 世界の主要宗教の人口分布を見ると、総人口の33%がキリスト教徒、22%がムスリム(イスラム教徒)であるとされています。ですから、キリスト教とイスラム教が対立するようになれば、全世界の人口の半分以上が争いに巻き込まれることになるのです。

 こうして21世紀の平和に対する脅威として、文明の衝突、宗教間の対立が、大きくクローズアップされるようになりました。

「ムジャヒディン」からタリバン、そして9.11
 冷戦時代末期の1988年に公開された映画に、シルベスター・スタローン主演の「ランボー3/怒りのアフガン」という作品があります。この映画の背景には、1979年にソ連がアフガニスタンに侵攻し、1988年に撤退を決定したという歴史的事実があります。

 映画の内容は、米国の兵士ランボー(スタローン)と「ムジャヒディン」と呼ばれるイスラム教の民兵が、協力してソ連軍の部隊と戦うというもので、キリスト教徒とイスラム教徒が団結して、無神論者(共産主義)の悪者であるソ連を倒すという構図になっています。

 ラストのテロップには、「この映画を全てのアフガン戦士たちに捧げる」という言葉が流れます。

 実際、米国はソ連に対抗するため、CIA(中央情報局)を通じて、このようなゲリラ組織に武器や装備を提供していたといいます。ですから、映画そのものはフィクションといえども、当時のアフガン情勢がはっきりと反映されていると言えるでしょう。

 しかし皮肉にも、そのムジャヒディンはのちに「タリバン」などの武装勢力となり、米国に反旗を翻すようになります。そして、イラク戦争、9.11、「イスラム国」の出現など、今日の米国を悩ます中東情勢へとつながっていくのです。「昨日の敵は今日の友」という言葉がありますが、ムジャヒディンに関しては、全く逆になってしまいました。

 冷戦後、欧米流のグローバリゼーションは、政治、経済、軍事、文化など全ての分野で世界を圧倒的に主導してきました。共に血を流したにもかかわらず、冷戦終結の恩恵を受けることができずに取り残されたイスラム世界には、こうした欧米化の波に対する反発や抵抗があり、それがテロリズムの動機となっているのです。

 私たちは、テロ自体を許すことはできませんが、その背景にある宗教間の対立には目を向ける必要があるのです。

宗教和合の道を示された文鮮明師
 文鮮明師は生涯を懸けて宗教間の和解と調和のために働いてこられました。その成果の一つが、世界の主要な宗教の経典の言葉を、テーマごとにまとめた『世界経典』です。それにより、世界の諸宗教の教えの約7割は同じことを言っており、残りの3割が各宗教の特徴を表す言葉であることが明らかになりました。

 教えの大部分は同じことを説いているにもかかわらず、なぜお互いに争っているのか、各宗教が内省する機会を提供したのです。

 もう一つは、2003年以来、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖職者らが参加し、イスラエル、パレスチナ自治区、ヨルダン、レバノンなどで継続的に開催されている「中東平和イニシアチブ」です。中東三大宗教の和解の儀式として始まったこの運動は、今やシリア問題やパレスチナ問題など、具体的な問題に対して解決策を討議するフォーラムに発展しています。

 宗教間の和解による世界平和の実現は、文鮮明師の遺訓であり、今後も統一運動の中心的テーマであり続けるでしょう。

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 次回(4月21日)は、「地球温暖化問題に焦点を当てた第1回『鮮鶴平和賞』」をお届けします。

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