ファミリーサポートコーチング講座 10

 「ファミリーサポートコーチング講座」は、文字どおり、より良い家族関係や人間関係を実現するために読者の皆さまをサポートするコーチング講座です。
 毎週月曜日配信予定です。皆さまの家庭生活、信仰生活、社会生活にぜひお役立てください。

第10回 ラポール4 共感

相手の気持ちをくみ取る

ナビゲーター:西森 響
監修:阿部 美樹(伝道教育局)

 今回は、ラポールを築くのに大切な四つの要素のうちの「共感」についてお伝えします。

【共感とは】
 コーチングにおける共感は、相手の立場・事情・状況の中で考え、感じ、相手の気持ちをくみ取ろうとする行為です。

 共感すると、相手は潜在意識でお互いにつながっていることを感じるので、良好な関係(ラポール)を築くことができます。

【同情や感情移入との違い】
 同情は、相手に対する自分の感情です。
 相手の痛みや悲しみや不幸を感情として扱うのではなく事象として扱い、それに対して自分が悲しみや痛みを感じるという自分の感情を表現することです。

 感情移入は、相手の状況や体験をあたかも自分が体験しているかのように感じることです。
 映画を観ながら、ハラハラドキドキ、泣いたり笑ったりするのは、主人公に感情移入しているからです。この感情も、自分が勝手に感じるものです。

 それに対して、共感は「あなたはそうなんですね」と相手の気持ちをくみ取ろうとする行為です。相手の気持ちにも、うれしい気持ちにも共感できます。ジャッジしません。
 極端な例を言えば、「死にたい」という相手に対しても「そうなんですね。そう感じているんですね」と共感することができます。

【ありがちな失敗】
 親しい二人の会話で「分かる、その気持ち。私もそういうことがあった」というものがあります。

 ここでの「分かる」は、聴く人自身の過去の体験に基づいて感じている気持ちであって、話す人の気持ちとイコールではありません。
 このままこの会話を続けると、話す側は「話を取られてしまった。結局私の気持ちなど分かってくれないのね」と感じてしまうかもしれません。

【母親が子供を叱るとき】
 子供の行動を見て、事情を聴かずに叱りつけると、子供は「お母さんは自分の気持ちを理解してくれない」と思ってしまいます。
 何があったのか事情を聴いて、その子の気持ちに意識を向け共感し、理解した上でその行為を注意すれば、子供は聞く耳を持ちます。

【共感するためには】
 まずは相手に寄り添い、相手の世界で生きてみる。その人の関心、立場、能力、状況を一緒に考え感じてみる、くみ取ろうとする。このような姿勢が役立ちます。

 悩んでいる相手の話を聴いて分かった気になるのではなく、可能な限りそれを再現して体験してみます。その人になりきって演じてみます。
 そうすると、話を聞いて感じたものとのギャップがあることに気付く可能性があります。積極的に「共感」する姿勢に欠けていたことに気付くこともあります。

 上述した「分かる、その気持ち」は、自分中心に考え感じる癖です。この癖を直すためには、相手の立場に立って共感することを意識的に実践していくことが役立ちます。

※前回の記事で説明した傾聴は、さらに共感的傾聴に高められることが望ましいという立場から、この記事においては「聴く」と「聞く」とを書き分けました。

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 次回は、FSコーチングを受けた40代女性の感想をお届けします。