コラム・週刊Blessed Life 156
5年ぶりに朝鮮労働党大会が開催される!

新海 一朗(コラムニスト)

 予告もなく突然に始まった北朝鮮の党大会。2021年1月5日から12日の8日間、北朝鮮は「第8回 朝鮮労働党大会」を開催しました。
 前回の党大会は、2016年5月に行われた4日間の大会でしたから、その倍の日数をかけた5年ぶりの開催となりました。

 今回の党大会で、金正恩氏は父の金正日氏も就いていた朝鮮労働党「総書記」の肩書を新たに得ることになりました。
 一方で、妹の金与正氏については何の説明もなく、党政治局員候補から外され、権力中枢から遠ざけられる格好になりました。順位で言えば、20番目ぐらいに落ちたと見られますから、彼女の政治判断や失策が問われたものと推測されます。

 党大会で金正恩労働党委員長は、これまでの経済発展5カ年計画を振り返って分析し、「目標はほぼ全てで途方もなく未達だった」と経済不振を率直に認めた上で、「欠陥を認め、繰り返さぬよう断固たる対策が必要だ」と強調しています。
 全ての事業計画が挫折したと言ってよい金正恩委員長自身の5カ年にわたる経済政策の未遂をはっきりと国民の前に語ったわけです。

 北朝鮮のような絶対的独裁政権のトップが国民の前に「失敗(全てで途方もなく未達)」を認めるなど、あり得ない総括をしたことは、実に不思議な気がします。

 今回の党大会には7000人の党員たちが参加しましたが、世界のメディアを驚かせたのは、誰一人マスクをしていないという映像でした。

 北朝鮮に新型コロナウイルスなどは存在しないし、感染者もいない、死者もいないというアピールを行う目的であったかどうか知りませんが、コロナなど恐れてはいないという「マスクなしの党大会」を演出したのです。

 この党大会で、これからの「5カ年計画」作成の方向性を示したのだとすれば、軍需と民需を並行させてきた今までの路線を大きく変更するものであるとは考えられません。

 軍需は軍需で、核保有国の既成事実化を強固にし、米国が屈服するまで「核兵力の強化」(1万5000kmのICBM〈大陸間弾道ミサイル〉、原子力潜水艦、極超音速ミサイル、水中発射式核戦略兵器、軍事偵察衛星、無人偵察機などの開発製造)の路線を止めないと金正恩委員長は宣言し、1月10日には軍事パレードを行い、最新のSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)「北極星5」を披露しています。

 民需は民需として取り組んでいくという方針は、いわゆる経済政策であり、国連や米国からの強い経済制裁が解かれない限り、結局は自力更生で経済を立て直すというところに帰着せざるを得ません。

 昨年は、経済制裁に加え、台風や水害で北朝鮮の経済は大打撃を受け、国民の生活は食料が尽きる中で、人々は生死の瀬戸際をさまようありさまでした。

 この冬は、寒波到来で零度を大きく下回る、凍(い)てつくような寒さが北朝鮮を襲っており、多くの人々が凍死しているという事態も考えられます。

 電力不足は深刻で、暖を取る手段もなく、あらゆる民生面において、国民の生活を保障する民需政策を軌道に乗せるという金正恩委員長の責務遂行こそが、待ったなしの緊急課題となっています。

 軍需の軽視策に走れば、軍部が納得しないというジレンマもあるでしょう。しかし軍需を抑えても、民需を最優先させる政策を真面目に実施しなければ、北朝鮮は国民の餓死と共に、国家そのものが地上から姿を消すことになりかねません。

 2500万人という少なからぬ人口を抱える北朝鮮は、2021年、サバイバルを懸けた正念場を迎えています。