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2014年03月21日

【韓国昔話12】石仏の血の涙

【韓国昔話12】石仏の血の涙

 とても人情味に欠けた、思いやりのない人々ばかりが住んでいる村がありました。村の人々は、旅人がたずねてきても、物置小屋さえ貸してあげませんでした。

 ある蒸し暑い夏の日、一人のお坊さんが、その村をたずねてきました。村の人々は、お坊さんを見て、すぐに門を閉じて鍵をかけてしまいました。

 村を一回りしたお坊さんは、ある家の前に立ちました。その家は、ほかの家とは違って、半分ほど門が開いている家でした。

 「この家のご主人はいらっしゃいますか」

 お坊さんが家の中に向かって声をかけました。すると、

 「どちらさまですか」

 と言って、家の中から、気のよさそうなおばあさんが出てきました。

 「とおりすがりの旅人です。残った冷や飯でもあれば、ひとさじいただけないでしょうか」

 「ああ、そうですか。どうぞ、中にお入りください」

 おばあさんは、ほかの村人とは違って、とても親切でした。お坊さんは、おばあさんがつくってくれたご飯をおいしく食べました。

 ご飯を食べ終わったのち、お坊さんは、家の外を見回して言いました。

 「この村の裏山に石仏があるでしょう?」

 「はい、あります」

 「その石仏が血の涙を流す日、この村には大きな災いがふりかかるでしょう。もし石仏が血の涙を流せば、すぐに高い所に避難してください」

 話し終えると、お坊さんは、おばあさんにお礼を言って、そのままどこかに行ってしまいました。

 村に大きな災いがふりかかるという言葉に、おばあさんは、とても恐ろしくなりました。

 次の日から、おばあさんは、毎日、裏山に登って、石仏が血の涙を流していないかどうかを調べました。

 ある日、村の人々がおばあさんにたずねました。

 「ばあさん、なぜ、毎日、裏山に登るのかね?」

 「裏山の石仏を調べてくるためだよ。あるお坊さんがおっしゃったのだが、裏山の石仏が血の涙を流す日、わしらの村に大きな災いがふりかかるそうだ」

 おばあさんは、心配そうな顔をして言いました。

 すると、その話を聞いた村の人々は、腹を抱えて笑いだしました。

 「石仏が血の涙を流すだって? そんなばかげた話がどこにある?」

 「そいつは、もしかしたら、頭のおかしな坊主だろう」

 村の人々は、おばあさんの話を信じませんでした。

 「お坊さんのお話を、そのように笑い飛ばしてはいけないよ」

 おばあさんは、人々が自分の話を信じてくれないので、もどかしく思いました。

 おばあさんの言葉に、村の青年たちは、いたずらっ気がわいてきました。

 「おれたちで、石仏の目に血をぬらないか?」

 「何の血をぬるのさ?」

 「何の血でもいいではないか」

 「よし、あした、すぐにやってみよう」

 翌朝、青年たちは、おばあさんが登る前に裏山に登っていきました。青年たちは、石仏の目に犬の血をぬったのち、茂みの中に隠れて、おばあさんが登ってくるのを待ちました。

 しばらくして、おばあさんが登ってきました。

 いつものように、おばあさんは、石仏の目を調べるために、石仏に近づいていきました。石仏の目を見たおばあさんは、びっくりしてうろたえました。

 「なんと、石仏が血の涙を流している!」

 そう言うと、おばあさんは、突然、村に向かってかけおりはじめました。

 おばあさんのようすを見ていた青年たちは、腹を抱えて笑いました。

 「本当に、石仏が血の涙を流したと思っているようだ!」

 「あのばあさんは、完全に頭がおかしくなっている!」

 青年たちは、おもしろがって、おばあさんのあとを追って山を下りていきました。

 山から下りてきたおばあさんは、すべての家々を回りながら叫びました。

 「裏山の石仏が血の涙を流しましたよ! 早く高い所に登らなければなりませんよ!」

 おばあさんが呼びかける叫び声を聞いた村の人々も、びっくりして家から飛び出してきました。

 ところが、そのあとから来た青年たちが笑いながら言いました。

 「石仏が血の涙を流すなんて、そんなばかなことがどこにある? われわれがいたずらをしただけだよ」

 青年たちの言葉を聞いて、村の人々も、安心してからからと笑い飛ばしました。そして、

「あのばあさんは頭がおかしくなったようだ」

 と言ったりもしました。

 おばあさんは、しかたなく、一人で山に登っていきました。そうして、おばあさんが山に登り終わったときです。

 突然、真っ黒な雲が空をおおったかと思うと、雷と共に大雨がふりだしました。村は、すぐに洪水になりました。

 村の人々と家々は洪水にのみこまれ、跡形もなくなってしまったそうです。

 

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